蒸し暑い時期になりワキ汗が気になる季節になってきましたね。
当院でもワキ汗外来がスタートとなり、保険適用で塗り薬が処方開始となりました。
普段あまり話題に出なくとも、
デオドラントスプレーやふき取りシートを使用するのが習慣化しており、
ワキ汗対策はエチケットであり、生活の安心材料にもなっている気がします。
今回は当院で処方スタートとなった『エクロックゲル』についてご紹介させて頂きます。
【エクロックゲルとは…】
エクロックゲルは日本初の保険適応の原発性腋窩多汗症用外用薬です。
治験の膨大なデータに基づき、
厚生労働省から
「原発性腋窩多汗症の治療ができると言って良い」と
日本初のお墨付きがもらえた塗り薬という事です。
抗コリン作用という原理で汗腺のアセチルコリンの働きを局所でブロックすることで汗を抑えます。
(つまり発汗の指令を抑える作用があります。)
治験では開始から6週目で60%程の方が日常生活に支障が無くなる程度まで改善しました。
【原発性腋窩多汗症について】
エクロックゲルの効果が認められている疾患『原発性腋窩多汗症』とはどんなものなのでしょうか??
簡単に言うと、『明らかな原因となる疾患がないのに、ワキの汗が多い』という症状が当てはまる場合、
原発性腋窩多汗症と判断できます。
明らかな原因が無いままその状態が6か月以上続き、
かつ以下の6項目の基準の内、2項目以上当てはまれば
原発性腋窩多汗症と判断できます。
□最初に症状がでるのが25歳以下であること
□左右両方で同じように発汗がみられること
□睡眠中は発汗が止まっていること
□1週間に1回以上多汗の症状がでること(エピソードがある)
□家族にも同じ疾患の患者さんがいること
□ワキ汗によって日常生活に支障をきたすこと
※エピソードとは
例えば
会議で発言する際に、ワキ汗をかくことで消極的になってしまう…
ワキ汗が気になって電車のつり革が持てない…などです。
特に、『わき汗が多いことで日常生活に支障をきたす』ということが最も重要な判断の基準となります。
多汗症は悩んでいる方は9~10人に1人と実は多いのに、
受診率は非常に低く7%未満とのデータがあります。
ワキ汗が気になる事が、まさか病気だとは思ってもない方が多いようです。
【今までの治療について】
塗り薬 |
汗の入り口を塞ぐ働きのあるお薬をワキに塗布します。 例:塩化アルミニウム製剤 |
注射薬 |
汗を出す指令を伝える神経に作用するお薬をワキに注射します。 例:ボトックス |
手術 |
汗を出す指令を伝える神経を切断します。 例:ベイザーシェービング、汗腺摘出法 |
その他 | 神経ブロック、レーザー治療(ミラドライ)、内服療法、精神療法が上記の治療と一緒に用いられることがあります。 |
今までの汗腺を塞ぐような塗り薬に比べ、『エクロックゲル』は汗を出す指令をブロックする働きがあり、
『異常な発汗そのものを抑える効果がある』という点が画期的です。
また、『エクロックゲル』、内服療法、精神療法、以外の治療は
身体全体の発汗量は変化しないためワキ以外の汗が気になるようになる可能性もあります。
また、レーザーや手術となると
痛みやダウンタイム(肌が通常の状態に戻るまでの時間)や後遺症の不安があったり、
ボトックス注射においては
定期的に打つ必要があり、耐性が付いてしまうと効果が出なくなってしまうデメリットがあるなど、
従来、有効性が高いと言われている治療は中々手が出しづらい状況でした。
それに比べ『エクロックゲル』は従来の塗り薬(塩化アルミニウム製剤)に比べても
副作用として皮膚の炎症によるかぶれ様の湿疹が起こりづらく
より一層、使いやすい、始めやすい手軽な治療薬です。
【エクロックゲルの使用方法】
1本で2週間分の量となり、処方量は医師と要相談になります。
専用のアプリケーターを使用して薬液をわき全体に塗り広げます。
(手で塗ったり他の部位には使用できません。)
【副作用】
局所に塗るお薬なので重大な副作用は起きづらいようですが、
抗コリン薬を使用していることを念頭において頂き、
以下の症状が出た場合は使用を中断する必要があります。
過度なかゆみ、赤み
目のちらつき、目のかすみ、眩しく感じる
過度に口が乾く など。
また、妊婦・授乳婦・16歳未満の小児は使用は当院では処方できません。
その他、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害がある方、成分に過敏症のある方は使用できません。
ご希望の方は予約が必要です。お気軽にお問い合わせください。
待望の新薬『エクロックゲル』、その効果に期待です!